このワークショップは、所要時間150分、イラストコースの専門高校生約20名を対象に開催したものです。
※ 掲載作品は撮影許可をいただいております。
本ワークショップについて
キャラクターの個性や価値観など目に見えない細かな設定は、独創性のある作品制作に繋がります。また、イラスト制作に限らずデザインやマーケティングにおいても、ユーザー像を具体的に描き、思考や行動傾向を予測/分析する「ペルソナ」の作成が行われています。
より具体的に人物像をイメージし、周囲と意見交換する経験は、ものづくり全体に影響する力になると考え、今回のワークショップを実施しました。
本ワークショップでは、その具体的な設定のレベルを「キャラクターの解像度」と名付けています。
必要なもの
筆記用具、A3用紙、付箋3色
キャラクターの解像度を上げるワークショップ
1.アイスブレイク(15min)
- 人物イラストをスクリーンに映し、元気な生徒に名前と年齢を決めてもらう。
- 付箋を配布し、その人物の「性格」「休日の過ごし方」「口癖」を考えて黒板に貼ってもらう。
- 貼ってもらったコメントを匿名でランダムに読み上げる。
- 具体的に考える面白さと、ペルソナについての説明。
POINT
- 名前を決めてもらう際、参加者の名前と被っていないかの確認が必要です。
- 表示する人物イラストは、これからの作業の敷居を上げないよう簡易的な方が良いです。
- 少し特徴的なイラストを準備しておくと、尖ったコメントが混ざりクラスの雰囲気が和らぎます。
2.お題シャッフルと導入(15min)
- 3色の付箋を配り、それぞれに「年齢と性別」「性格」「職業」を記入してもらう。
- 付箋を回収・再配布して、ランダムなキャラクター設定を与える
- これから何をするか、全体的な流れを説明。
POINT
- このワークショップは全員が協力的でないと成立しないので、序盤で確認しながら進めてください。
- 年齢が幼い場合、職業は将来の夢ということにします。
- 今後の工程で、職業に対する偏見的なコメントが出る可能性があります、問題がある場合はファンタジーな職業で縛ると良いです。
3.キャラクターを描く(40min)
- 配られた設定をもとに、A3用紙の左側にバストアップのキャラクターを描いてもらう。
POINT
- 職業に合わせた仕事着や制服を着せなくてOK
- 年齢に合わせた服装など調べながら描いてOK
- 個々の作業スピードを揃えるよう、細かく残り時間のアナウンスを入れる。
4.名前と設定項目を記入(10min)
- いくつかの項目から、それぞれが3つ選んで用紙の右側に記入。
- キャラクターに名前をつけて表紙に書いてもらう。
POINT
- バラエティ豊かな項目を提示すると今後の作業が楽しくなります。提示してない項目の提案があればそれも許可します。
4.筆談形式で設定を書き加える(60min)
- スクリーンにタイマーを移し、3分間自由に設定項目を書き足して次に回していく。
他の人の書いた設定に付け加えたり、共感コメントを残すのも可。 - 前半記入した本がどうなっているか気になる思うので、半周ほど閲覧用に記入なし1分で回す。
POINT
- 絵に対する悪口を書かないように忠告は必要です。
また、『兄弟と仲が悪そう』←『〇〇さん家みたい(笑』のような悪意は無いけど微妙なラインのコメントを避けるため、個人名は禁止とします。
5.ワークショップのまとめ(10min)
最後に、まとめのコメントをして終了です。私の場合は、
キャラクターの解像度が高くなるにつれて、人となりが見えるようになってきたと思います。ランダムなお題から急に生まれたキャラクターですが、ここまで具体的な設定がつくことで、例えばそのキャラクターが、職場の後輩から恋愛相談を受けた時どんな反応をして、なんと返すのかとかも少し想像ができるような気がしませんか? もし、これからの作品制作の中で方向性に迷うことがあったら、解像度を高めてキャラクターを動かしてみてください。
のようにまとめました。
筆談で膨らむキャラクター設定
挙手制では発言を遠慮する生徒も、筆談形式は意見を書いてくれます。筆談ならではの水面下でのやり取りの面白さと、1枚の紙に考えを書き記していく中で想像が膨らみ、且つ共感が目に見える形に残ることで、より密度の高い意見交換を交わせます。
何より、やり取りを見るに、楽しんでワークショップに参加しくれたようで嬉しい。
終わりに
実践した結果、終始和やかなムードで一体感のある良いワークショップとなりました。
中高生向けにワークショップをする場合は、大人がおちょけて雰囲気を和ませようとするのではなく、生徒が気兼ねなく意見できる環境作りに注力し、一人一人の個性を(匿名で)周知していくことで、ワークショップらしい柔軟な雰囲気の場にしていけると感じます。特に序盤は、数分ほどの短い作業と提出を繰り返すと、参加意識が高まり足並みが揃うのでオススメです。
ファシリテーターとしては、にこやかな雰囲気を出しつつ、時間制限のアナウンスをしつこい位に入れ続けるのがコツかなと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。