読書感想

「13歳からのアート思考」の読書感想

※ この記事は、書籍の内容を要約したものではなく個人的な読書感想です。

今回は、「13歳からのアート思考」末永幸歩著 の読書感想。

本の紹介

本書は、美術に苦手意識が生まれる分岐点が「13歳」であるという統計から、技術や知識に重点を置いた美術の授業が創造性を奪ってしまうのではないかという仮説を立てて始まります。

美術を通して培うことのできる「創造性/自分なりの視点」は、情報過多の現代において求められるものであり、今もっとも大人が学び直すべき学問かもしれません。本書では、6つの20世紀アート作品を鑑賞しながらアートとの向き合い方を分かりやすく、そして柔軟な思考を育むような文章で解説しています。

本書を読む上で、美術に関する専門的な知見を備える必要はなく、美術に興味がある人はもちろん、美術に興味がない人にとっても役立つ一冊です。また、一見13歳向けのタイトルに思えますが、個人的には社会人が読むとより良い刺激を感じることができると思います。オススメです。

この本を読んだ理由

デザイナーの私としては、アートとデザインの違いはハッキリしていると分かりつつも、ここ3年ほど「デザイナーもアーティストのような立ち回りをした方が息が長いんじゃないか(特にフリーランスは)」とぼんやり感じていたのですが、冒頭を読んだ時点でその突っかかりが取れるような予感がして一気に読みました。

読書中に思ったこと

13歳からのアート思考

本書では、クリエイターを「花職人」と「アーティスト」と呼び分けています。
例として、ルネサンス時代に貴族の依頼を受けて肖像画を描く画家を「花職人」。カメラの登場で写実的な表現スキルの価値が下がり、アートならではのリアルを模索・探求していった人物を「アーティスト」としています。

これは結構大人な区別のように思えます。
私が13歳だった頃を思い返すと、美術は得意な方でしたが、絵については「画力の向上」が中心にありました。「探究心から生まれる自分ならではの表現」のようなものは、同業者との差別化や知的な年配のディレクターさんと話していく中で、必要性を感じていった覚えがあり、もし13歳でこの本を読んでいたら、早いうちからクリエイティブを俯瞰できていたかも。

面白いと感じたのは、リアリティについて作品解説を交えて語られている部分。
写真のような静物画とピカソのキュビズム、エジブト壁画。それぞれ表現が全く異なる中で、テーマにリアリティがあるという解説はとても面白い。時代背景によって絵画の必要性が変化すると考えると、昨今のなんでも情報が手に入り、ましてやAIが上手にイラストを描く状況は、アートに求められるものがまた大きく変わる時なのでしょうか。NFTアートが現れた頃の、訳わからない価格帯はその変化の価値だったのかと納得しました。

すぐ使える知見

読み終わって、ちゃんと身につけておきたいと感じたのは2つ

1つ目は、一枚の抽象画を見て、そこから浮かんだストーリーを100文字程度で書くというプチワーク。
この結果は、アートの柔軟な面白さを体感できる上に、デザインとは考え方が異なるのでデザインとアートの違いを子供に教えるときに使えそう。

2つ目は、デザイナーからアーティストに転身したアンディウォーホルをいう人物の作品。活動内容がかなり面白いと感じたので、覚えておきたい。

おわりに

私は美術館で見る絵画(特に古い油画)が結構退屈でして、企画展ばかり選んで足を運んでいたのですが、本書を読んで絵画の見方が分かり楽しめるようになったのではと思います。アートが理解できるようになる本というより、アートに対する「理解し難い」というスタンスが取り払われる素敵な一冊でした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

オザワタクヤ

オザワタクヤ

フリーランスのデザイナー / イラストレーター。 非常勤講師やアートディレクター、スプラトゥーン等もしています。

関連記事

TOP